2018年09月09日

活版印刷三日月堂 その2

活版印刷三日月堂(第二巻 海からの手紙)
著者 ほしおさなえ

活版印刷三日月堂 その2

第2巻も読了。
今回の4編もそれぞれとても良かった。
それぞれの想い、経験が三日月堂に関係するお話に収斂してゆく。
都合8編(第1巻も4編)の中のそれぞれの登場人物が、ほかの編でも関連して登場して段々と知り合いの輪が大きくなってゆく。
(月野弓子さんの三日月堂のお仕事も、だんだんと増えて行きます。)
悪い人は出てこない。
周りの人の気持ちがわかる人ばかりだなぁ。
自分のことを深く考えることができる人ばかりだなぁ。
と思いました。

1. ちょうちょうの朗読会 (第二巻 第一篇)

カルチャーセンターの朗読講座(黒田敦子先生)に通う、4人の生徒の物語。
図書館司書のわたし(小穂)、小学校教師の三咲、遊園地勤務の遥海、英語教室の講師の愛菜たちは、黒田先生から
4人で大正浪漫夢通りにある蔵カフェ『kura』での朗読会をしてみないかと誘われる。
黒田先生とKura店主の渋沢さんとの打ち合わせで演目も決まり、プログラムの印刷の話となる。
『ひとつだけの活字』の縁で、三日月堂へ。
素敵な仲間と朗読と、そしてシンプルな活字でできたプログラム。
こころ温まる物語です。

2. あわゆきのあと (第二巻 第二篇)

ぼく(田口広太君(11歳))と亡くなった姉あわゆきの物語。
お父さんから、生まれて三日でなくなった自分の姉の話を聞き、姉の十三回忌に『ファースト名刺』をつくろうと
思い立つ。
中谷先生が三日月堂を知っていた関係で、広太君は弓子さんと知り合い・・・。
(中谷先生は、『ちょうちょうの朗読会』の三咲さんかな?)
『淡雪って春の雪でしょう?雪が消えたら春が来る。・・・』
家族の絆、人々の思いがつまった切ない物語です。

3. 海からの手紙 (第二巻 第三篇)

銅版画を学んでいたわたし(昌代)が、あわゆきのファースト名刺が気になって三日月堂へ。
同居していた幸彦と別れ、きっぱり銅版画をやめたはずの昌代だったが、三日月堂へ行ったことをきっかけに
また制作を開始する。
昔の恩師、内山先生に紹介された今泉版画工房に通いだす。できた版画を弓子さんとみているうちに二人で
豆本にしてみようということになり・・・。
自身の悩み、師の友人の苦悩などそれぞれが向かい合いけじめをつけてゆく・・・。
応援したくなる短編です。

4. 我らの西部劇 (第二巻 第四篇)

心臓発作で倒れたわたし(片山慎一さん)が、結局会社を辞め実家の川越に移り住む。
働き手である私が倒れ、妻や子供たちに負担がかかる家庭でのいざこざのなか、父、片山隆一の晩年の仕事
がクローズアップされる。ライターとして死ぬ寸前まで仕事をしていた父には、未完の雑誌の最後の部分である
不明となっていた原稿があった。
その原稿を発見し、父の遺志を継いで、弓子さんの協力で本を作成する・・・。
親とは、子とは、家族とは、と問いかける短編です。


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Posted by けいじさん at 15:20│Comments(0)読書記録
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